ABCデータの収集:先行事象、行動、結果
ABCデータ収集とは、困難な場面について次の3つを記録することです: 先行事象 (直前に何が起きていたか)、 行動 (実際に観察したこと)、そして 結果 (直後に何が起き、何が役立ったか)。数週間にわたって一貫して記録すると、バラバラだった大変な日々が、対処できるパターンとして見えてきます。
3つの要素それぞれの意味
ABCの価値は、3つの項目を分けて記録することにあります。自由記述では原因と反応が混ざってしまいますが、3つの固定された欄があれば、先週の火曜日と今週の火曜日を比べられます。
| 項目 | 記録する内容 | 例 |
|---|---|---|
| A — 先行事象 | 数分前までに何が起きていたか:場所、そこにいた人、何を求められたか、感覚的な環境、時間帯など。 | スーパーマーケット、学校の終わり時間、予告なしに帰るよう求められた |
| B — 行動 | 観察したことを、解釈を加えずに簡潔に書きます。どのように見えたか、およそどのくらい続いたか。 | 床に倒れ込み、耳をふさぎ、約10分間泣いた |
| C — 結果 | 直後に何が起きたか、自分や周りの人が何をしたか、最終的に落ち着くのに何が役立ったか。 | 車に移動し、照明と騒音をなくし、ヘッドホンをして20分間静かに過ごした |
先行事象とは
先行事象は、その場での明らかなきっかけだけを指すのではありません。背景にある状況も記録する価値があります。同じ頼みごとでも、よく休めた日と長い一日の終わりとでは受け止め方がまったく違うからです。
専門家は多くの場合、直前のきっかけ(切り替え、要求、突然の物音など)と、その日を不安定にした周囲の状況(睡眠不足、体調不良、代理の先生、食事の抜け、普段より騒がしい環境など)を分けて考えます。記録が直前の30秒しか残らないと、見えてくるパターンは「切り替え」になりがちですが、それはほとんどの人に当てはまり、あまり役に立ちません。その前後の一日を記録することで、お子さんに特有のデータになります。
行動を客観的に記述する方法
カメラが捉えたであろうことを書き、そこから導いた結論は書かないようにしましょう。「コップを投げた、大声を出した、寝室に走った」はデータですが、「反抗的だった」「人を操ろうとしていた」は解釈であり、一か月後に読み返したときに通用しません。
客観的な記述は、記録に敬意を保つ助けにもなります。このメモは、シッター、先生、専門家が読むこともあれば、いずれは記述された本人が読むこともあります。困難な場面での行動は、ストレス下でのコミュニケーションであって、問題行動ではありません。記録の言葉もそれを反映させるとよいでしょう。また、体を揺らす、手をぱたぱたさせる、ハミングする、行ったり来たりするといった「自己刺激行動(スティミング)」と、つらさのサインを区別することも大切です。スティミングは自己調整であり、通常は事件ではなく、役に立ったこととしてメモに残すのが適切です。
結果を記録する
「結果」の欄には二つの役割があります。その後に何が起きたかと、実際に何が役に立ったかです。多くの人が後者を飛ばしてしまい、あとで書いておけばよかったと思うことになります。
時間が経つと、「何が役に立ったか」の欄が、記録全体の中で実際にもっとも役立つ情報になります。シッターに渡すリストであり、「学校でこうなったらどうすればいい?」への答えであり、落ち着くための道具箱(クールダウンキット)を作る材料にもなります。何も効果がなく、ただ時間とともに収まったときも含め、正直に書いておきましょう。
パターンが見えてくるまでの期間
信頼できる傾向が見えてくるまでには、数週間ほど、ある程度継続して記録する必要があると考えておきましょう。数件しかない記録は、ふつうの日よりも印象に残った日を主に反映しがちです。
最初に見えやすいのは時間帯です。たとえば夕方遅い時間帯や、学校の週の前日の日曜の夜などです。次に環境によるパターンが現れ、その後、特定の要求や人との関係に結びつく、より微妙なパターンが見えてきます。完璧な記録より、おおよその継続が大切です。抜けがあっても二か月続けた記録のほうが、二週目で投げ出した几帳面な記録よりずっと多くのことを教えてくれます。
よくある失敗と避けたいこと
- 寝る前にまとめて書く。 数時間後に再構成した記録は、ほとんどが再構成にすぎません。出来事が新しいうちに、三語でもいいので記録しましょう。
- 困難だった日だけを記録する。 記録に良い日がなければ基準値がなく、何が効果的なのかもわかりません。うまくいったことも記録しましょう。
- カテゴリーを毎週変えてしまう。 比較が意味を持つのは、項目が同じままの場合だけです。
- 観察ではなく結論を記録する。 解釈は、データを見直すときまで取っておきましょう。
- 記録を、議論における証拠として扱う。 これは理解のためのツールであり、子どもについての調書ではありません。
ABCデータを診察や学校との面談に持参する
すべてを渡すのではなく、要点をまとめましょう。ベビーシッターや教室で使う白紙のシートが必要な場合は、 印刷用ABCチャート には、Nelloで使われているのと同じ列があります。どのくらいの頻度か、いつ起きたか、最も多いきっかけ、そして確実に役立つことは何か、を一枚にまとめたほうが、生のエントリーを何十件も並べるよりずっと使いやすくなります。
診察時間は短いため、印象よりも具体的な情報のほうが重みを持ちます。「週におよそ3回の困難な場面があり、ほとんどは4時から6時の間に起き、多くは予定外の変更の後で、静かな部屋と20分の時間が助けになる」という記述は、医師や教師が活用できる材料になります。「午後が大変」という表現ではそうはいきません。
NelloでABC記録をつける
Nelloは、落ち着いた、強みに基づく、ローカル優先の自閉症トラッキングアプリです。「メルトダウン・デコーダー」は、困難な場面を1分以内に Antecedent(きっかけ)・Behavior(行動)・Consequence(結果)として記録します。感覚の出来事、睡眠、食事、トイレ、そして良かったことも併せて記録し、大変だった日の背後にあるパターンを浮かび上がらせます。アカウントもクラウドのバックエンドもありません。すべての記録はスマートフォン内の非公開データベースに保存され、作成したレポートも端末内で作られ、あなたが選んだ場合にのみ共有されます。
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